車窓の風景が、少し街っぽくなってきた。
それまで景色には山や草木、砂の大地ばかりがあったが、街の中心に近づくと雰囲気が一変。
人も現れるし、建物が急に出てくる。
日本の場合は、ずっと家が連なっているので、街と街の境は、特に都市部では分からない。
田舎でも数キロ行けば、次の家が出てきたりするものだ。
モロッコでは、街と街の数十キロの間、まったく家が出てこなかったりする。
これが世界のスタンダードなのだろうけど、日本人からしたら不思議な感じだ。
新しめの街に入ってすぐ、急にバスが停まる。
またトイレ休憩かと思いきや、ご老人が一人乗ってきた。
一番前の助手席の隣に入ってきたので、ちょっとビックリ。誰??
「はーい、みなさーん。フェズの街に来ましたー。この方は、案内をしてくれるヤマニーさんです」
「はじめまして、ヤマニーです。フェズの街は私が案内しますので、よろしくお願いします。」
かなり上手な日本語を使う、ガイドさんのようだ。
「フェズの街は、主に3つに分かれています。世界遺産の旧市街、これはメディナ。新しい旧市街、そして新市街です」
ほー。街ができた年代毎に、呼び名が変わるみたい。
「新市街は比較的新しいので、窓の外見てください。マクドナルドとかH&Mとか、最近のお店がたくさんあります」
たしかに。
新市街は綺麗だし、チェーン店がポツポツある。
「今から旧市街に行きます」
10分ほど走り、バスが停まる。
降りると、目の前にはガイドブックで見た景色が!
ブー・ジュルード門と呼ばれる、旧市街と新市街を隔てる城壁に設けられた、8つの門のうちの1つだ。
門に施された、フェズブルーの装飾がとても綺麗だ。
空の青と引き立てあっている。
「では、これからメディナに入って行きます。みなさん、ついてきてくださいね」
ブー・ジュルード門をくぐる。
昔からここにある門、いったいどれだけの人がこの下を通ったのか。
「はい、では皆さん、後ろを振り返ってみてください」
おぉ。
そういう造りなんだ!
「門の反対側は、ブルーではなくて、エメラルドグリーンになっています。ブルーはフェズの街を表し、エメラルドグリーンはイスラムを表しています」
なるほどぉ。すごい、面白い。
門の表裏に違う意味を持たせるなんて。
「あと、メディナではたくさんの人やものが、この細い路地を通っています。危ない時は『バラック、バラック!』と言ってくださいね。前のアメリカ大統領の名前と同じなので、覚えやすいですね~」
あはは。
たしかに覚えやすいや。
「ではこれから、神学校あとに行きます」
メディナの細い路地を、ぞろぞろと進んで行く。この辺りは治安もそんなによくないらしく、スリが頻繁にいるそうだ。
市場の中は、けっこう暗い。
アーケードになっていて屋根があるからなのだが、狭いこともあり光がほとんど届かない感じだ。
そして、匂いもきついね。
肉や魚、果物が生で置いてあるから、強烈な匂いを放っている。
そん中を進んで行き、ヤマニーさんが急に右側の立派な門の方へ歩いて行く。
どうやら、この先が神学校跡らしい。
中に入ると、すぐに広い空間が。
床は全てタイル張り。おそらく礼拝堂か何かだったのだろう。
そして、ぽっかりと空いた広い空間の上には、青い空が。
日がだいぶ傾き、神学校の屋根の上にちょうど落ちていく。
けっこう神々しい。
空間の外周には、豪奢な装飾。格子模様など、イスラム独特の模様だ。
神学校を後にし、ブー・ジュルード門まで戻ってくる。
ここからは、自由時間だ。
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