モロッコでは、ほとんどがアラブ文化に根差した世界遺産の中、唯一ローマ帝国時代の世界遺産であるヴォルビリス遺跡。オリーブの木々と乾いた大地の中に、その遺跡はポツンと存在しています。
石造りの神殿跡など、最盛期には約二万人もの人々が暮らした面影と古代ローマの雰囲気が残っており、当時の空気がそのまま閉じ込められたよう。
今回は保存状態もよく、モロッコでは唯一の古代ローマ帝国時代の世界遺産、ヴォルビリス遺跡を紹介します。
古代ローマ都市の生活が透けて見える邸宅跡
古代ローマ帝国時代の西暦40年ごろ、アフリカ西端の拠点として築かれたヴォルビリス遺跡。
街の最盛期には、約二万人もの人々がこの都市で生活を営んでいたこともあり、遺跡の方々で当時の暮らしぶりを窺うことができます。
遺跡内には、状態の良いモザイク画がいくつも現存します。そのことが世界遺産登録の評価にもつながりました。
また、モザイク画のある区画は、当時ローマ帝国騎士の邸宅だった場所。その鮮やかな画は、遠く離れたモロッコの地にも、故郷を思い出させる空間を作ろうという彼らの気持ちを、現代に生きる私たちにも届けてくれます。
古代ローマの象徴的な建物・キャピトル
ヴォルビリス遺跡が世界遺産に登録された理由の一つとして、北アフリカのローマ帝国時代の遺構が、よい保存状態で残っていたということがあります。7世紀にアラブ勢力がモロッコを席巻するにつれ、他の遺跡は破壊されたり風化の憂き目に会いましたが、ヴォルビリスは致命的な被害もなく残されました。
しかし、1755年に起きたリスボン大地震では、この遺跡も大きな被害を受けました。遺跡内のキャピトルの柱や壁、水道橋の一部も崩れてしまうなど、危機的な状況に陥ったことも。
遺跡のハイライトの1つであるキャピトルにそびえる柱は、崩れかけた状況を間近に観察できるスポットです。ゼウス神を祀る神殿で元々は屋根もある造りでしたが、今では柱が数本残るのみ。2000年の時の流れを感じるその姿は、観光客にも人気で絶好のフォトスポットにもなっています。
フォーラムとバシリカ礼拝堂
キャピトルと同じく、この遺跡のハイライトであるフォーラムとバシリカ礼拝堂。フォーラムは一般的には議事堂などの機能を有する施設になりますが、ここヴォルビリス遺跡では、集会所として市民に利用されていました。跡地には石の台座や柱が僅かに残るだけで、雑草の生えた石造りの床が繁栄の跡を偲ばせます。
フォーラムの脇にはバシリカ礼拝堂の遺構を見ることができます。現在は外壁が約100mに渡って残るのみですが、外壁の美しいアーチの曲線美が観光客の目を引き、キャピトルと同じくローマ帝国時代の美しい建築様式を感じられるスポットに。この場所に立つと、ローマ帝国時代のヴォルビリスに迷い込んだかのような気持ちになれる場所でもあります。
遺跡の歴史を展示するミュージアム
ヴォルビリス遺跡は長年に渡る崩壊の危機を乗り越えて、歴史的価値の高いこの遺跡を後世に残すため、現在も修復作業が続けられています。遺跡内にはミュージアムが設けられており、ヴォルビリス遺跡で暮らしていた人々の生活模様についても学ぶことができます。
写真はオリーブを引いて油を取っていた圧搾機。ヴォルビリス付近の特産品であったオリーブは、加工されたりなどしてヨーロッパに輸出もされていました。
モロッコで感じるローマ帝国時代の文化
歴史的にアラブ文化が中心のモロッコにあって、ヴォルビリス遺跡は少し浮いた印象を持つかもしれません。
ですが、保存状態がよく、当時の暮らしぶりも感じられるほどとても貴重な遺跡。ぜひとも訪れて欲しい世界遺産です。
<ヴォルビリス遺跡の基本情報>
住所: Route de Volubilis, Fertassa
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