馬の背を少し下るり、山頂へ続く登山道へと向かう。
そして登山道が再び登りに掛かる場所に、場違いなものが見えてくる。
鳥居だ。
何でこんなところに鳥居だけがあるんだろう?
ここにはどうやら初代の霧島神宮が鎮座していたらしい。
元々この場所にあった霧島神宮は西暦700年代の噴火で破壊されてしまい、そのあとに移された場所が登山道入り口の前にあった神宮跡だ。
そこも今では鳥居だけになっていてがらんどうだったが、明日は3代目の今の霧島神宮を訪れる予定。
どんな感じの神社なのか楽しみだ。
ここでも登山の安全を祈願し、切り立つ登山道へ足を向ける。
ここが最後の踏ん張りどころだな。
気合を入れ直し、さらに急になった斜面を登っていく。
登山道は砂はなくなったものの、相変わらず石がゴロゴロと転がっていて足をとられやすい状態だ。
靄がかかり始めて視界もよくないので、景色を楽しむこともできやしない。
ここは登ることに集中しようか。
カメラはリュックにしまい、大きな岩もあるので両手を使いながら登っていく。
靄のおかげで日光が弱まり、いくぶん涼しくなってきたみたいだ。
もうポカリの残りも少ない。山頂で全部飲み切ってしまうだろう。なので、ちょっとでも涼しくなるのは歓迎だ。
上を見上げると、まだ山頂までは高さがある。
けれど一歩ずつ一歩ずつ近づいているのは確かだ。
登山を通して思うのは、どんなに長そうな道のりでも、遅くても一歩ずつ進んでいけば山頂に到着できるということだ。
これが人生の色んな事柄にも通じそうだな、と毎回思わされる。
けれど、一歩ずつなんて言ってないで、やっぱりすぐにパパっと行きたいもんだよね。
よし、もうそろそろだ。
最初、山頂まで480mと書かれていた案内板も、今の地点にある物には200mと書かれている。
あと少しと分かると、元気も湧いてくるもんだ。
ふぅ、到着!
はぁ、想像していたよりもキツかった。
何とか山頂に到着。
あたりは靄が掛かっているけれども、ずっと見てみたかった鉾が遠くに見える。
正面へ回ると、この鉾がいかに大切にお祀りされているものかが分かるね。
しめ縄がかかり、近づくことができないようになっている。
この鉾の由来は、瓊瓊杵尊が日本を想像する時に生命の海をかき混ぜた際に使われた鉾とされている。
その鉾を海から引き抜いたときに、先端から滴った雫が日本となり、最後にこの高千穂峰に突き刺したという伝説がある。
というか古事記に書かれているそうだ。
そんな由緒ある鉾なのだが、百数十年前。
かつてこの地を新婚旅行で訪れた坂本龍馬は、その鉾を抜いたそうだ。
姉にあてた手紙にそのことが書かれていて、これは本当の話みたい。
じっと見ていると、ずっと見たかったものだという実感が湧いてきて、胸にジンとくるものがある。
ここまで登ってきて、本当に良かった。
さらに靄がひどくなってきたな。
この山頂、鉾を中心としてぐるっと一周できるようになっている。
ちょっと周ってみるか。
360°周ってみるけれど、ほとんど何も見えない。
本来韓国岳や新燃岳が見える方角も、真っ白な霧の中だ。
と、一人の女性が下からやってくる。
どうやら一人で登ってきたようだ。
さっき登っている時にちらっと下の方に見えたから、すぐに頂上へやってくるかと思ったが意外に時間がかかったみたいだ。
男のプライドというか何というか。
女性よりも登るのが遅いと自分にガッカリしてしまいそうなので、自分の方が早く登ってこれていることに安心している自分がいる。
しょうもないな。。。
一通り周ったし、水分補給して少し休憩するか。
ポカリも最後の一滴を飲み干し、あとは機内でもらった225mlのボトルのお水のみ。
下山は行きよりも体力の消耗は少ないけれど、心もとない量ではある。
まあ、これを大事に大事に飲むか。
さて、降りよう。
この記事へのコメントはありません。