アンコールワットはしっかり修復されてキレイになっているけれど、このベン・メリアはほとんど修復が進んでいない。
そのため回廊部分は崩れてしまっていて、石が転がり大きなガジュマルの木が石の間から伸びていたりする。
迫力が全然違う。
廃墟の美しさ、みたいなのが感じられる素晴らしい場所だ。
シェさんの案内に従って遺跡内へ。
回廊が崩れているので正面から入ることはできない。
なので脇にある見学用のルートへ。
木でできた足場が組まれているので、その足場を登っていく。
くっ。
一昨日、アンコールワットで転んだ時に打った足が痛む。
今日が一番痛い。
シェさんに続いていくと、隣にレリーフが。
おぉ、これ昨日の博物館で見た模様とほぼ一緒だ。
10人ほどのアプサラが踊りを舞っている横長のレリーフ。
このレリーフが意味しているところは実はよく分かっていないのだけど、博物館に多数展示てあるという事実を見ると、クメール文明にとって非常に大切なものを象徴するのだろう。
もっと勉強せねば。
そしてそのレリーフの両脇下を覗くと、崩れた回廊が見える。
これはスゴイ。。。
回廊の面影はまったく残っておらず、長方形に整った石が無造作に積み重なっている状態だ。
実はこの遺跡。わずか15年前に発見されたそうだ。
しかも発見して最初に調査に乗り出したのは日本人なんだって。
そして発見された当初は、巨木や草木に覆われていて全景は分からなかったそうだ。
それらの巨木は調査や復元の為にだい部分が取り除かれたそうだが、今もまだ大きなのガジュマルの木が残っていて、それが天空の城ラピュタの様な不思議な雰囲気を醸し出している。
しかし、たった15年前に見つかったのかと思うと、この場所に人知れず眠っていた遺跡の悠久の時を思わずにはいられない。
残念ながら今現在は日本人による調査は行われておらず、中国に引き継がれているそうだ。
その為、中国からの観光客も多いのかもしれない。
第3回廊を通り過ぎ、第2回廊の方へ。
こちらも原型はとどめていない。
回廊の部分と分かるのは、石が積み重なっているからだ。
そして、それらの割れた石にはハスの花の彫刻やアプサラ、ヒンドゥー教の神々が部分部分見ることができる。
これは今歩いている木組みの遊歩道がないと、見て回るのは不可能だな。
と、シェさんが先に進み、ボクにはその場所で止まっている様にと指示をする。
どうやら先に進んだ高い位置から写真を撮ってくれるらしい。
カメラを構えているポーズを取り、シェさんに撮ってもらう。
普段一人旅をする時は自分がフレームに収まることはないので、こういうのは久々だ。
あまり撮られるのは好きじゃないんだけど、たまにはいいか。
さらに進んでいくと、一際高く石が積み重なっている場所が。
それらの積み上がった石の頂上には、これまた大きなガジュマルの木が聳えている。
墓石に手向けられた花、というか巨木だな。
これは何ですか?
「ここが第1回廊ですよ。宗教戦争の時に徹底的に壊されてしまったので、こんな形に残っているんですよ」
ほぉぉ。そうなのか。
こんなに価値のあるものなのに、壊されてしまうのは何とも悲しい。
昔からどの国でもどの時代でも、支配・被支配の歴史は同じ様なものだな。
力によって支配したものは自らの正当性を示すために、前の文明を否定し新しいものに塗り替えてしまう。
そうやって消されてしまった文明や歴史は、後の時代に明かそうとするととても大きな努力がいる。
そもそも真の歴史を明かすことができないこともあるだろう。
そうなってしまった場合は、完全に闇の中だ。今までそんな結果になってしまった歴史はごまんとある。
この遺跡も闇に葬られたそんなものの一つだ。
しかし迫力が半端ない。
アンコールワットは遺跡自体がとても大きいので、そういった意味の迫力があった。
このベン・メリアは滅びゆくものの迫力がスゴイんだよなぁ。
写真では表現しきれない迫力が目の前から溢れ出している。
写真にすると平面になってしまって、奥行きが全然分からない。
まあ本当に腕のあるカメラマンはそれすら表現できてしまうのだろうけど。
遺跡の内部をひとしきり見て回った。
これまで他の観光客は皆無。
本当に貸切状態だ。
これにはシェさんの慧眼が大きなところだ。
観光客はこの遺跡に9時ごろにやって来始める。
なので、ボクらは8時過ぎにこの遺跡に到着する様に来た、というわけだ。
この作戦が見事に大当たり!
そのおかげで、この貸切状態での観光。本当にありがたい。
そして遊歩道に従い回廊の外に出る。
外側からもと来た参道の方へ戻っていく。
するとようやく他の観光客に遭遇。
数人の中国人観光客とおぼしき人々が、これから遺跡に入ろうとしている。
「今9時くらい。これからどんどん人が来ますよ。そうしたら遊歩道は人でいっぱいでちゃんと見れないし写真も撮れません」
そうだよね。本当にシェさんに感謝だ♪
ありがとう。
さて。
それじゃ戻りますか。
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